先日のイベントで、撤収するサークルもちらほら出てきた時間帯だ。私も会場内をうろついたり一服したりして自分のスペースへ戻ると、私の介護として召喚された友人が男性と話していた。私がスペースに近づくと「〇〇(私の本名)ちゃん、これってあんまりBLみのない作品だよね?」と私へ振り返った。
サンプルを手にした男性に私は「ブロマンスというか、新刊はほとんど喧嘩しかしてません」と答えた、ような気がする。(コミュ障の悪い癖で咄嗟の言語化に弱い)
その男性はなんとそんな私の雑な説明で、既刊と新刊を購入してくださった。
男性が立ち去ったあと友達が言うには、彼はお姉さんの手伝いで参加していて(ご苦労さまです)金カムは未読だが、せっかくだから何か購入しようと会場内を散策していたところ、私のポスターが目に留まったようだ。既刊のサンプルもじっくり目を通してくださってたらしく、かなり前向きな捉え方をすれば、あの奇妙なギミックが気に入ってもらえたのかもしれない。
何はともあれ、カップリング作品を謳いながらも以前から男性にも読んでもらいたいと願っていた私の目標が達成されてしまったのだ。
彼をイベントに誘ったお姉さんにも感謝だ。
というのも、これはいつぞやのブログにも書いたが、私はどうやらアロマンティックでアセクシャルに分類されるらしく、誰にも恋愛感情を抱くことがないのだ。
そういった性的マイノリティであるためか、私の書く作品は恋愛というよりもバディものに近いと思う。作中でも書いたが「恋愛でも友情でもない、名状し難い関係」を意識している。というか愛や恋といった感情を忘れてしまったので書けるはずがない。
そして物語全体としても二人の関係性以上に、作品としておもしろいものを書けたらな、と常々思っていた。要は尾杉が好きな人もそうでない人でも楽しめる作品を目指していた。
しかしカップリングタグをつけて投稿していると、当然だが尾杉を好きな人以外の目に留まることはない。ならいっそ、なろうでもエブリスタでも、一次創作として書いて投稿すればいいじゃないかという話だが、いかんせん私はこの二人のキャラクター性や相反する性質にも関わらずどこかで互いを認めている、もしくは理由もなく無関心ではいられない"だろう"という自己解釈の関係で、自分が描いたシナリオの中で演じてほしい願望があるのだ。
この話はまたおいおい語るとして、あの男性が手にしてくださった本をおもしろいと思ってくれるかはわからないが、今回の引き合わせはネット上では起こらない偶然だと思う。
この約二年でさまざまなもののバーチャル化が進み、正直ネットで事足りるなと実感するものもあった。けれどその場の空気感、今回のような偶然の出会い、顔を見て話しお礼を伝えるなどは、やはりネットでは代替できないものなのだなと改めて感じた。
親指を動かすだけで情報が向こうから飛び込んでくる時代。情報の洪水に溺れ、取捨選択もままならない状態で思わず目を閉じてしまう中で、自分の足で探し、こちらから手を伸ばすという体験は現実世界の醍醐味のひとつかもしれない。
あの男性が出会った偶然が、良い出会いだったと思ってくれることを願いたい。
そしてポスターってやっぱ大事だなと思った。
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